ラスト釣行
おそらく今シーズンの最後となる釣りに行って来た。
夏の間、天気が悪かったり、家の事でバタバタしたりして、なかなか釣りに行く機会がなかった。
もう9月も半ばを過ぎて、台風も来ているので、このチャンスを逃すともう次は無いと思い、無理やり出かけたのである。
今年は何度か釣りに行ったのだが、増水していたり、先行者がいたりして満足な釣りが出来なかった。
さらに、7月に槙ノ沢に行った時に、何でもない河原で転んで左手を突き指してしまった。
骨に異常は無かったが、しばらくは中指と薬指が動かせなくて、ヘツリや高巻きを伴う沢には行けない状況だったのだ。
ようやく痛みは消えたのだけど、まだ完全ではない。
最後だし、安楽な渓でのんびりと釣りを楽しみたい、と考え、2年前に尺ヤマメを釣った川に行くことにした。
柳の下にドジョウはいないはずだが、最後は小さくてもヤマメの顔を見たかった。
朝一から行くつもりが少し遅れてしまい、6時半に車止めに着いた時にはすでに5台の車が停まっていた。
なんかもう絶望的に釣れる気がしなかったが、他の川に転戦しても状況は変わらないだろう。
予定している区間に先行者が入っていない事を祈りながら自転車を走らせる。
30分ほど林道を走って入渓点へ。
河原を注意深く観察しながら釣り上がる。
とりあえず足跡は見当たらない、すぐに最初の瀬でチビが走った。
どうやら先行者はいないようで一安心。
とはいえ、激戦区なので反応は無し。
30分ほど行った辺りで何故か足跡を発見!?
おかしいな、ここまで釣り人が歩きそうな所は注意して見ていたのに。。
頭はねられた?いや、途中から入るには結構無理をしなければならないからそれはない。
おそらく気が付かなかっただけだろう。
どうしたものか。ここはただでさえ魚影薄いのに、先行されてたら釣りにならない。
もっと奥まで歩くか?日帰りだと時間的にキツいな。
ヘツりや高巻きをこなすにも左手が心許ないし、人が入ってたら終わる。
考えた末、一度戻ってさらに下流に入ることにする。
林道を戻って、適当なところから川に降りる。
あまり下りすぎると堰堤の乗り越しに苦労するので、ほんの短い区間だけの釣り。
ここは幸い先行者は無し。準備して釣り再開。
少し行ったこのポイント。対岸のタルミに置いた毛鉤の下で魚影が動いた。
アワセを入れるとズッシリとした手ごたえ。
あっ!これは結構デカいぞ!
久しぶりの魚の感触、グリングリンと首を振るような抵抗はイワナかな。
慎重に寄せてきて、もう少しでラインを掴める、というところで岩に引っかかった。
竿を倒して交わそうとした瞬間、首を振られてバレてしまった。。
一瞬見えたオレンジの魚体はやはりイワナだったか。
惜しかったな、逃がした魚係数を割引いても9寸はあった。
勿体ないことをした。
とはいえ、魚の反応があっただけでも良かった。
今日はあわやの完全ボウズも覚悟していたので、少し救われた。
この区間、確か渓流釣りを始めたばかりの頃に釣ったことがあるが、その時もいいイワナが出た記憶がある。
意外と穴場的に人が入らないのかも知れない。
今日唯一の小ゴルジュ。昔は大巻きで越えた気がするが、埋まっていて水線で通過できた。
ゴルジュを抜けた先のこのポイント。大岩の横の白泡の脇で出た。
底から浮かび上がって毛鉤を咥え、反転するところまではっきり見えた。
小気味よい引きで上がってきたのは7寸のヤマメ。
ボウズ回避の嬉しい一匹。
大したことない型だけど、理想的な出方で掛けることができたので満足感が大きい。
さらにその先、ここでも出た。残念ながら一瞬毛鉤を触っただけで掛けられなかった。
なんか意外と良い釣りが出来てるじゃないか、と思ったがその先は沈黙。
魚は出ないが、開けた川で伸びのびと竿を振れるのは気持ちがいい。
いつも井戸の底みたいな溪で窮屈な釣りをしているけど、本来テンカラってこういう川の釣りなのだと思う。
釣果の無いまま、あっという間に終了点が見えてきた。
ここがほぼ最後のポイント。瀬尻に近いところで出た。
反転するのを見て合わせたがスッポ抜けた。咥え損なったか?
もう最後なのでなんとかアイツは釣りたい。
一度離れてタバコに火をつける。
どうしようか?もう一度出てくれるかな、毛鉤替えた方がいいかな?
あれこれ思案をめぐらせる。
私は普段、あまり考えずに釣りをして「出なければ次」というスタンスなのだが、本当はこういう魚を釣れるようにならないと腕は上がらないのだと思う。
5分ほど休ませてから、再びポイントに近づく。
毛鉤はそのまま、これで出なければカディスに替えてみよう。
ラインで水面を叩かないよう、慎重に振り込む。
息を殺して毛鉤の行方を追っていたら・・・出た!
予想より良い型、掛けた瞬間に猛烈に奥に走る。
最初のダッシュを矯めて、遊ばせないようにちょっと強引に寄せる。
顔を見せてくれたのは8寸ほどのヤマメ。パーマークが薄れて秋の色に染まっていた。
この一匹で十分満足。もうこれ以上は望むべくもない。
まだ昼前だが、良い感触が残っているうちに竿を畳み、川を後にした。
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