雁坂峠を周回
先日、父が他界した。
ちょうど1年ほど前に道路で転倒して入院。年寄りの転倒は命取りと言われるが、足腰が弱り、持病の心臓病やてんかんの発作、誤嚥性肺炎などで入退院を繰り返すうちに、気が付いたら寝たきりになってしまった。
最後は食事も取れなくなり、骨と皮だけになって息を引き取った。
83歳という年齢を考えれば仕方なかったと思うが、治療方針や病院の選択などでずいぶん悔いが残った。
おそらく、どんな選択をしたとしても結果は変えられなかったのだろうけど、せめてもう少し人間らしく死なせてやりたかった。
人は自力で物が食べられなくなったら、それ以上の事はしてはいけないのだと思う。
そんな訳で先週は山どころではなかったのだが、無事に葬儀も終わり、とりあえず少し落ち着いたので山を歩いてきた。
親を亡くしたばかりで山歩きなど・・と叱られそうだが、何か気分転換をしないとやりきれなかった。
まだまだやる事は山積みなのだが、行けるときに行っておこうと無理やり出かけたのである。
以前から気になっていた奥秩父の藪尾根、トウバク沢左岸尾根と雁坂嶺東北尾根をつないで、雁坂小屋から黒岩尾根を下った。
ルート図
朝6時40分、出会いの丘を出発。
雲一つない快晴、今日も暑くなりそうだ。
ヘリポートの奥の古いパイロット道路に入り、すぐに斜面に取りつく作業道を辿る。
これはトウバク沢のトンネル管理施設へ続く道で、整備された良い道である。
トウバク沢から先はかなり荒れているが、豆焼沢のトオの滝まで歩くことが出来る。
新緑の道を行く。
木漏れ日がまぶしくて、身も心も洗われるような気になる。
九十九折れで急斜面を登り、尾根を回り込む所から道を外れて尾根に乗った。
急斜面の尾根末端をこの道でクリア出来るので楽に取りつくことが出来た。
イヌブナの実生が一杯出ていた。
そういえば去年は花が一杯落ちていたっけ、やっぱり豊作だったのだな。
斜面は急だが、結構歩かれているようで踏み跡がある。
1350辺りから傾斜が緩むとシャクナゲが現れた。
1400m付近はちょうど見ごろ。
いいねえ~。
・・・などと浮かれていたら密度が上がってきた。。
世に数多の藪あれど、シャクナゲの藪は最凶最悪である。
若い頃、真ノ沢の高巻きで道を誤り、何も知らずに突っ込んで身動きが取れなくなった事がある。
両足とも地面から浮いて行くも戻るも出来なくなり、もしかしてこのままここで死ぬのでは?と怖くなった。
泳ぐようにしてなんとか抜けたが、以来シャクナゲだけは絶対に避けて歩くようにしている。
幸い、さほどの密藪ではなかったので無事に通過。
枯れスズタケの中の鬱蒼とした道を進む。
灌木帯を抜けると急に空が開けた。
ダケカンバとミヤコザサの明るい尾根を進む。
こんなところで防獣柵?
柵内の笹の茂り方を見ると、鹿の食害がいかに大きいかわかる。
ひと登りで樺小屋に到着。
出会いの丘から約2時間、踏み跡も割としっかりしているので、この尾根は結構使えるかも。
休憩後、雁坂方面に登山道を進む。
バイカオウレンがあちらこちらで咲いていた。
地蔵岩展望台に寄り道。
これから向かう雁坂嶺。
なだらかな稜線の手前に1900m圏の小ピークが見える。
ここから尾根伝いに行くとシャクナゲの激藪につかまるらしいので、あの手前の鞍部まで登山道で巻く事にする。
・・が、尾根に取りつく地点を見誤った。
このガレを登ったら・・
目的の鞍部の手前のコルに乗ってしまった。
目的方向には岩場が立ちはだかっている。
登れない岩ではなさそうだったが、上の方はナゲ藪。。
おとなしく右から巻く。
踏み跡は無し、ナゲとコメツガと倒木が交互に行く手を阻む。やっちまった感がハンパない。
悪態をつきながら強引に突破。
なんとか目的の鞍部に出た、登るべきはこのザレ場だった。
ここが本来の孫四郎峠だとの説もあるようだ。
確かに普通に道まで降りられそうだし、西の小荒川谷方面にも下って行けそうな感じ。
ここからピークの西側を巻く薄い踏み跡が続いていた。
これを追ってピークを巻く。
かなり藪っぽいが、なんとか行ける。
再び尾根に戻ったところが孫四郎峠。
ここからは尾根筋を登ってゆく。
倒木とコメツガの藪に塞がれてはいるが、所々薄い踏み跡が確認できる。
2100m圏で尾根が広がった、テント張って泊まったら気持ち良さそうな場所。
針葉樹林の香りの中を気持ちよく登る。いかにも奥秩父といった感じの森。
最後はツガ藪がキツくなり、小枝と葉っぱだらけになりながら進む。
稜線が見えてきた。
倒木を乗り越えながら進むと視界が開けて
雁坂嶺に到着。
藪と倒木がうるさくて快適な尾根とは言えないが、マーキングの類が一切無くて気分よく歩けた。
消えかけていたが最後まで踏み跡があったので、かつてはちゃんとした道があったのだろう。
誰もいない山頂のベンチで早めの昼食休憩。
左手に富士山
右手には南アルプスの山並みを眺めながらの優雅なランチ。
休憩後、縞枯れの森を雁坂峠へ下る。
雁坂峠の先に水晶山。
振り返って国師方面。
峠に到着。
天気が良すぎて暑い。
早々に下山にかかる。
雁坂小屋への下りで、朝出会いの丘にいた人とすれ違った。
「どこから登ったのですか?」と不思議そうな顔をしていたので、ルートを説明したけど、良くわからなかったみたい。
数人の人でごった返す雁坂小屋は素通りして黒岩尾根へ。
この道は展望も無くてダラダラと退屈な道なのだが、おおむね緩い下りが続くので膝に不安がある身としてはありがたい。
黒岩展望台に寄り道。
水晶山の中腹に滝が見えた。
あれはもしかして水晶谷の大滝かな?
よくあんな所登ったなあ。。
人間の登攀力ってすごいな。
14時半、無事に出会いの丘に帰着。
疲れたけど、モヤモヤしたものがスッキリ晴れて、気持ちのいい山歩きができた。
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