土曜日、和名倉山の藪尾根を歩いてきた。
市ノ沢の左岸、ナシ尾根を登り、仁田小屋尾根を下る周回ルート。
ルート図とコースタイムはヤマレコで。
ナシ尾根とはまた不思議な名前である。
調べたところ、どうやら正確には尻無し尾根というらしい。
尻無し、つまり尾根の末端が切れ落ちて尻が無いように見える事から名前がついたようだ。
でも、奥秩父の尾根なんて大抵末端は急斜面じゃないの?
逆になだらかに下っている尾根なんてほとんど無いような気がするけど。。
この尾根を歩いて見ようと思ったのは、その名前に魅かれたというのもあるが、もっと実用的に、和名倉山からの下りにこの尾根を使えれば、帰路にサメ沢ゲートまでの林道歩きを短縮できると考えたからである。
とはいえ、いきなり下りで未踏の尾根を使うのは怖いので、一度登りで歩いて見ようと思ったのだ。
朝7時過ぎにゲートを出発。
林道を歩き出すと小鹿が道案内をするように前を歩いていく。
この辺の鹿は人間を怖がらないようだ、困ったものだ。
モノレールの軌道から大洞ダムに下る。
ここに来るのは何年振りだろうか。
以前は市ノ沢を釣るのによくここに来ていた。
このダムが放水しているのを初めて見た。二瀬ダムが渇水している影響だろうか。
ダムを渡り、市ノ沢へ向かう湖岸道の途中から上に上がる踏み跡で斜面を登る。
道は明確で、植林帯の急斜面を九十九折れに登ってゆく。
登り出してすぐに汗がふき出してくる。
植林帯の中は風もなく蒸し風呂のように暑い。
対岸の林道からも見えた大崩落地の横を登ってゆく。
無線機のアンテナがあった。
ここで給水。
すでにパンツまでビッショリ。(笑)
うっかり綿のパンツを穿いてきてしまい、べったりと肌に張り付いて気持ちが悪い。
明確な道はここまで。
この上は消えかけた作業道と鹿道をつないで登る。
植林帯を抜けると多少傾斜が緩んで自然林になる。
所々にテープとリボンの目印があったが、道はほぼ無い。
下りだとちょっとルート探しに苦労しそう。
ようやく稜線に出た。
涼しい風が抜けて汗をかいた体を冷やしてくれる。
ここまでで1Lの水を消費した、全部で3L持ってきたのだが、足りるか不安になる。
尾根筋を登ってゆくと突然視界が開けた。
枯死したスズタケが一面になぎ倒されて異様な光景。
数年前の大雪で倒れたのだろうか。
ここで今日初めての展望。
芋ノ木ドッケから雲取山の稜線が見えた。
スズが倒れているので歩くのには苦労しないが、日差しを遮る物が何もないと暑くてたまらない。
早く樹林帯に逃げないと、と足を速めると・・・
やっぱりこうなるか。。
お約束の藪こぎが待っていた。
枯れスズタケの中、踏み跡と鹿道が交錯して訳が分からなくなる。
とにかく上に登る道を探しながら藪を進む。
クマと鉢合わせしないようにホイッスルを吹きながら歩く。
藪の中は風も通らず暑い。
まったく何が悲しくてこの猛暑の中藪尾根歩いてんだか。
やっぱり夏は沢だろ、暑い時期に沢登らないでいつ行くんだよ!
と自分に腹が立ってくる。
この辺はかつての伐採の痕跡があちこちに残されていて、古いワイヤーなどが散乱しているので足を引っ掛けないよう気を付けて歩く。
古いチルホールが落ちていた。
こういうのって使い捨てちゃうのだろうか。
藪がひと段落したところで1507mの三角点に到着。
ここが尻無ノ頭と呼ばれるピークらしい。
ここで小休止。
水1.5Lを消費、このペースだと水持たないかも?
山頂付近に水場があると聞いたが、正確な場所を聞いておくのだった。
スズタケの赤ちゃん。
何十年か後にはまた激藪になるのだろうか。
その頃にはもうこんな所は歩けないだろうな。。
1700m付近で南側の視界が開けた。
帰路の仁田小屋尾根、その向こう中央の山は飛龍かな。右の尖ったピークはカバアノ頭と思われる。
スズタケの藪は終わったが、代わってアセビなどの灌木が煩くなる。
右、左と藪をよけて進む。
ようやく和名倉山が見えてきた。
まだまだ遠い。
1800m辺りからはようやくカラマツと樺の気持ちの良い尾根になった。
信州の高原を歩いているような涼しげな森。
吹き抜ける風もひんやりとして快適。
このまま山頂までこんな感じで歩けたら最高だな。
・・と思ったが、現実はそんなに甘くなかった。。
その先は倒木がゴロゴロとして、乗り越えながらの歩き。
しかもカラマツの倒木は、素手で触ると細かい棘がチクチクと刺さるので厄介だ。
倒木帯を抜けると仁田小屋尾根と合流。
ここからはまた歩きやすい森になった。
少し早いが、腹が減ったので早めの昼食。
2000m近い標高で涼しくて快適・・・のはずが。
ハエが凄い!
一体何が起こっているのか!?
と思うくらいのハエの大群。
盛期の三面のアブ並みに群がってくる。
アブと違って刺さないのでまだいいが、五月蠅い事この上ない。
オニギリを口に押し込むように、慌ただしく昼食を終えて逃げるように歩き出す。
実は、昼飯を食ったら山頂はパスしてこのまま仁田小屋尾根を下ってしまおうか?などと軟弱な事を考えていたのだけど、そんな事もすっかり忘れて山頂に向かって歩き出してしまった。
そんなこんなで和名倉山に到着。
相変わらず誰もいないひっそりとした山頂。
森の中にぽっかりと空いた空間に三角点と山名板があるだけの地味なピークだが、不思議と落ち着ける良い場所だ。
ここもハエがすごかったが、タバコに火を点けたら大分逃げて行った。
ルートを確認しようと、ウエストバッグに入れておいた地図を広げると・・・
うわっ!汗で所々滲んでいるじゃん。
いつの間にかバッグまで汗でビッショリと濡れていたのに気が付かなかった。
危ないあぶない、地図が読めなくなるところだった。
水はあと1L弱残っている、下りはそんなに消費しないからなんとかなりそうだ。
一服して12時に下山開始。
ナシ尾根分岐。
標識の間の暗い森がナシ尾根の入り口。
あの藪を考えるとこの尾根を下りで使うのは勇気がいるな。。
仁田小屋尾根は結構歩かれているようで、踏み跡もわりと明確で歩きやすい。
ヌメリスギタケかな。
これは何だろう?
ハツタケ系かと思ったけど倒木から生えていた。
松葉沢ノ頭。
この小ピークを右から巻こうとしてルートを外しかけた。
ここで尾根が分かれる。
左方向、東に下る広い尾根が正解。
すぐに尾根が狭くなり枯死スズタケの中に明確な道が続く。
所々藪っぽくなって、鹿道が交錯するが、メインルートはスズランテープで笹を束ねるように縛ってあり、迷わず歩くことが出来た。
以前、仙波尾根の下りでも同じような目印を見た。同じ人たちの仕事だろうか。
さらに下って仁田小屋の頭。
ここにも三角点。
広葉樹の植林地。
以前ここで森づくりをしていたという人たちは今でも活動しているのだろうか。
1405mからの広い尾根の下りでちょっと迷う。
よく見ると踏み跡が尾根の右に続いているのがわかるが、悪天候や日没間近だと見つけられないかも知れない。
斜面が急になると、踏み跡は植林帯の中の明確な登山道となって下っていく。
急な下りでは膝が痛み出す。
前は右ひざだけだったのが、かばって歩いていたせいだろうか、左の膝まで痛むようになってしまった。
無理せず、ゆっくりと下る。
仁田小屋に到着。
すごい立派な小屋じゃないの。
玄関からちょっと中を覗いてみたが、まだ現役で使われている様子。
ここで沢の水を給水。
今日初めての冷たい沢水、火照った体が一気に冷やされ、乾いた喉に染み渡るように美味しかった。
さらに下って大洞林道へ降りた。
ここから1時間少々の林道歩き。
ストックを着きながらヨタヨタと歩く。
ナシ尾根の末端が見えた。
あの崩落地の横を登ったはずだが、とんでもない急斜面に見える。
よくまああんな所を登ったものだ。
4時過ぎに車に帰着。
あ~疲れた。。
涼しくなるまで藪尾根歩きはしばらくお休みしようと心に決めた山行だった。
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