荒川林道
日曜日、安谷さんにご一緒いただいて奥秩父の古道、荒川林道を踏査してきた。
ルート図はヤマレコで。
荒川源流、入川の左岸には十文字峠に通じる登山道が通っているが、右岸にも古い道があり、かつては金山沢(大荒川谷)の小荒川出合いに建っていた荒川小屋を経由して孫四郎峠まで通じていたという。
この道が現在でも歩けるレベルまで整備されたという話を聞いて、一度歩いてみたいと考えていた。
今回はバリエーションウォーキングというサイトのルート図を利用させていただいた。
また、道を整備して下さったこちらのサイトの記録も参考にさせていただいた。
実はこの道、15年くらい前に途中の中小屋沢までは歩いたことがあり、今回はその先の荒川小屋跡までを辿る山行という事になる。
朝7時に渓流釣り場の駐車場を出発。
芽吹き始めた木々の中、川沿いの森林軌道を歩く。
抜けるような青空の下、ミツバツツジが満開。
ヒトリシズカも。
小一時間で赤沢の取水口に到着。
ここから斜面に取りつく。
最初は姫刺歩道と呼ばれる東大演習林の道を登って行く。
と言っても道はほとんど消えかけて、随所に付けられた赤テープを頼りに斜面を急登するしかない。
かなりキツい。
ルート図とテープを頼りに不明瞭な踏み跡を拾って登ると、地図通り1270m付近で立派な道にでた。これが荒川林道。
かなりしっかりした道で快適に歩ける。

所々崩壊して道が消えているが、先のサイトの管理人さんが設置してくれたトラロープを使って難なく通過できた。
ハナネコノメ

1280圏の広い尾根を回り込むと中小屋沢が下に見える。
ここから沢に降りる道がやはり崩れてちょっと危ない。
ここもトラロープを頼りに慎重に下降。

ザイルがあれば懸垂下降したい所だ。
ここからはいよいよ未踏の区間。
道は急に悪くなるが、道型は明確でほとんど迷わずに歩ける。
途中の崩落個所がかなり悪く、苦労しながら通過。
帰路にまたこの道を歩かなければならない事を考えるとあまり無理は出来ない。
「危なかったら引き返しましょう」と決めてあったので、これ以上ヤバい場所があったらそこで今回の踏査は断念せざるを得ない。
幸いその先は悪い場所はなく、無事にヒダナ沢を通過。
ただ、思ったよりも時間がかかっていて、目的地に着くのがかなり遅れそうだ。
帰りの事も考えて12時には引き返しましょうと話す。
先の地図によれば、この先で道が不明瞭になるそうなので慎重に進む。
普段の山行では地図とコンパスだけで歩くように心がけているのだけど、この山域で下手に道を失うと遭難しかねないので、今回はなりふり構わずGPSに頼って歩いた。
不明瞭な尾根を越えるところで、小さなマーキングがアセビの木に付けられていた。
この辺から一度尾根を登るはずなので上を見たが道型は見えず、それらしい目印もない。
もう少し先か?とそのまま進むが、その先で道型は薄くなり、心なしか踏んだ感じが柔らかくなってゆく。
道を外した時の感覚に近いものを感じたが、ここまでの道も決してしっかりと踏まれていた訳ではないので、確信が持てないまま先へ進むと、やはり次の小尾根で道が消えた。
安谷さんと2人で地図とGPSを見ながら相談。
この尾根を登れば正規のルートに出るはず、とこの尾根を直登する。
地図上で道に出るはずの標高を越えても道はない。
尾根筋がちょっと肩状になって、道をつけるならここだろう、と思われる場所にも道はない。
下に平らなところが見え、「あれが道かな?」と思うが先に続いている感じではない。
道を外した不安感が一気に高まる。
私は臆病なので、道に迷ったと思ったらとにかく確実な場所まで戻る事を考えるのだが、安谷さんはもう少し登ってみましょうと言う。
果たして、一登りした平坦地に明確な道が現れ、斜面をトラバースするように続いていた。

道に戻れて一安心。
私一人だったら不安で右往左往していたところだが、安谷さんの正確な判断に助けられた。
やはりご一緒していただいて良かった。
ちなみにルート図にはこの尾根ルートが「道型不明瞭」と破線で記されていたが、道と呼べるようなものは無かった。
そこからは枯死したスズタケが多少煩いものの、立派な道がつけられていて快適に歩けた。(感覚がマヒして「立派」と感じてしまうが、一般的な登山道に比べれば踏み跡に毛が生えた程度のレベル)
この道はそのまま孫四郎峠方面に続いているので、途中で荒川小屋跡に降りる道を見つけなければならない。
下降点にマーキングがあるという話なので注意しながら歩く。
下に見え隠れする荒川谷の流れが近くなってきた所で、岩っぽい小尾根に付けられたマーキングを発見。
よく見ると下の方まで点々と目印が付けられているのが見える。

GPSで確認してもここが下降点で間違いないようだ。
斜面が緩そうな先の小窪を伝って沢に降りた。
降りたところは小さな台地。
よく見ると、埋もれかけた一升瓶や茶碗のかけらがある。

予想していたよりずいぶん狭苦しく感じるが、ここが荒川小屋の跡地に間違いない。
原全教の「奥秩父」によれば、昭和初期にはここに2棟の小屋が建っていたそうだが、とてもそんな感じには見えなかった。
ともあれ、無事に目的地に辿りついてほっと一息。
達成感というより安堵感の方が大きい。
時間は昼前、出発してから4時間以上かかってしまった。
道を探しながらとはいえ予想以上に時間がかかった、これでは釣り目的でこの道は使えそうもない。
昼食をとって大休止。
何故かザックに釣竿が入っていたので(笑)、沢に降りてちょっとだけ竿を振ってみた。
見事に撃沈。。
まだ毛鉤で釣るには時期が早かったみたいだ。(と、いう事にしておこう(^^;)
小荒川谷の源頭、雁坂嶺方面の山は昨晩降ったのだろうか、うっすらと雪化粧しているように見えた。
12時過ぎに下山開始。
帰りは往路で間違えた道を修正して正規ルートを確認しながら歩いた。
復路は来た道をたどるだけなので気が楽だ。
悪場の通過だけは気を使ったが、あとは景色を眺めたりしながら余裕をもって歩けた。
最後の姫刺歩道だけは正規の道を見つけられないままだったが、ここは赤テープを目印に適当に下るしかないようだ。
以前来た時も結構アバウトに下ったような記憶がある。

この尾根筋は大きなブナやカツラがあり、これからの新緑や紅葉の時期に歩いてみたい気持ちのいい場所だった。

3時前に取水口に降り立つ。
帰りは下り基調とはいえここまで2時間半ほどで歩くことができた。
やはり歩くことに専念できると早い。
あとは森林軌道で車に戻るだけ。
安谷さんに花の名前を聞きながら歩いた。
コガネネコノメ

朝歩いた時よりずいぶん木々の緑が濃くなっていた。
この時期、森は速足で装いを変えてゆく。
4時前に無事駐車場に帰着。
なんとか念願だった荒川林道を歩くことができた。
先述した正確なルート図を公開して下さっている方や、道を整備して難所にロープを設置して下さった方々がいなければ到底歩けない道だった。
感謝に堪えない。
そして、このような山行に貴重な時間をさいて同行してくださった安谷さん、どうもありがとうございました。
※注 今回のルートを釣りや沢登りで利用しようと考えている方は、十分な準備と情報収集をされることをお勧めします。
要所にテープの目印が付けられていますが、それだけを頼りに行き当たりばったりで歩ける道ではありません。
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