週末、源流部会の釣査でちょっとハードな源流へ行ってきた。
今回は釣行記というより、山行記。
メンバーはなんさんとなんさんの山岳会のOさん、Sさん、私の4人。
Sさんとは初対面だが、Oさんとは以前岩トレでお会いした事がある。
皆さん、バリバリの沢屋さんなので、足を引っ張らないよう気合を入れて参加した。
今回は前夜に最寄り駅で集合し、私の車に乗り合わせて秩父へ向かう。
最初は車止めでキャンプする予定だったが、結構な雨に負けて道の駅で仮眠をとる。
朝7時過ぎ、車止めを出発。
まずは1時間半の林道歩き、山道を歩くのはさほど苦にならないが、林道を延々と歩かされるのはかなり辛い。
9時、ようやく入渓点に到着。
今回は本格的な沢の遡行になるので、久しぶりにハーネスを装着する。
私は最低限のガチャしか持たないが、他の皆さんはハンマーやハーケンなどフル装備。
ロープなども全部お任せで、少々後ろめたい。
身支度をして遡行開始。
昨夜の雨も上がって快晴の空の下、気持ちよく沢を歩く。
この沢は何度か遡行しているが、久しぶりに見たらずいぶん土砂で埋まっていた。
以前はヘツったり巻いた所も、普通に水線で通過できる。
楽は楽だが、ちょっと残念。
綺麗なナメ滝。
ハルゼミの声を聞きながらの沢歩きは最高に気持ちが良い。
予定よりちょっと遅れて、2段の大滝に到着。
河原の様相はだいぶ変わってしまっていたが、滝は以前の迫力を保っていた。
間近で瀑風と飛沫を浴びていると鳥肌が立つような興奮を覚える。
この滝を前衛にキ○チヂミと呼ばれるゴルジュ帯が続く。
この滝、落ち口に謎の残置があるのだが、直登しようなどと考えたら、キ○どころか寿命まで縮んでしまうので、ここは素直に巻いて乗り越す。
以前はゴルジュの出口まで一気に巻く道があったのだが、数年前の台風で斜面が崩落し、通れなくなってしまった。
なので、滝の上に降りて、その先は川通しで遡行する。
濡れるのを厭わなければさほど苦労しない。
最後の難所で残置スリングが切れていてちょっと難儀したが、無事に通過。
コツは「絶対に下を見ないこと」(笑)
この先はしばらく渓相が落ち着く。
左から小さな沢を合わせ、その先の小ゴルジュを過ぎると、この沢最大の支流と出合う。
ここからの巨岩帯は普段は伏流して水が消える。
ここで面白い光景を目にした。
落ち込みで出来た水溜りに10数匹のイワナが閉じ込められていたのだ。
突然の人の姿に驚いてバシャバシャと慌てふためいている。
一抱えほどの水溜りにこれだけの魚がいたら、水が枯れなくてもいずれ飢え死にしてしまうだろう。
見殺しにするのも可哀想なので、なんさんと二人で掬って、下流の淵に放流してやった。
こういう善行を積んでおくと、いずれイワナが恩返ししてくれるかもしれない。(笑)
予定ではここから竿を出して遡行するはずだったが、ちょっと遅れ気味なのでもう少し歩く。
大滝を巻いて、平坦になった所からやっと竿を出す。
時間も押しているので、あまり粘らず、要所々々で釣るような感じ。
エサ釣りのSさんは疲れたので釣りはいいや、というので私となんさんとで交代に竿を振る。
ザックを背負ったままなので窮屈な釣りになってしまったが、ほとんどポイントごとに反応があって、しばしイワナと遊ばせてもらった。
私は思ったより型が揃わず、9寸止まり。
なんさんは尺を2本揃えた。何かが違うのだろうなあ。。
ツを抜けた所で竿を畳み、今日のテン場を目指す。
予定していた場所まで届きそうもないので、ずっと下でどうにか泊まれそうな場所を見つけてタープを張った。
夜は河原で宴会。
疲れていて、早々に寝袋に入ってしまった。
明け方はかなり冷え込んだけど、虫に悩まされる事も無く、快適に寝ることができた。
翌朝、早起きしてSさんが炊いてくれたご飯をお腹いっぱいに食べて出発。
予定より1時間遅れたので、ほとんど竿は出さずに遡行する。
1時間少々で今回詰め上がる沢との出合いに到着。
ここでザックを降ろして、30分ほど周辺を釣る。
この辺は思ったより魚影が薄くて、ほとんど釣れなかった。
ここまでに真新しい焚火の跡がいくつか見られたので、かなり抜かれてしまっているのかも知れない。
竿を仕舞って、沢を登る。
すぐの二股を右へ、水量は少ないけどなかなかの美渓である。
コマドリの囀りを聞きながら気持ちよく遡行する。
最初の通らず。
しばらく滝を眺めていたなんさんが「なんだか登れそうだね」などと言い出す。
クライミングの達人Oさんも登る気満々。
私は正直、登りたくないんですけど。。。(^^;
でも、以前来た時は右から巻いて、稜線近くまで追い上げられて苦労したので、それを考えると、まだ直登した方が楽かな?とお二人に従う事に。
1段目。ちょっと濡れるが、意外と楽に登れる。
2段目、簡単に行けそうだったので真っ先に取りついたら、最後で行き詰ってしまった。
どうしたものか?と思っていると、「JICKYさん、ザック降ろした方が良いんじゃない?」と声がかかる。
そんな事を言われても、もう降りられない。(^^;
登攀力も無いのに最初に登ってはいけないよなあ・・・
「その岩の上に置けない?」
左の上にどうにかザックを置けそうな岩が出ている。
問題はどうやってそこまでザックを上げるかである。
岩の上を探りながら考えていたら、なんとなく登れてしまった。
クライミングでは、ちょっと立ち位置や体の向きを変えただけで、意外なほどあっけなく登れてしまうことがある。
岩登りは実に奥が深くて面白い。
続いてなんさんとOさんが難なく登り、
最後にSさんをお助け紐で引き上げる。
その上にも小滝がかかる、これは絶対に無理だと思ったが、二人は「空身なら行けるね」などと言う。
ただし、空身で登るとザイルを使って荷揚げしなければならない。
時間も無いのでここは素直に巻く。
スズタケを掴み、藪を漕ぎながら垂直に近い斜面を登る。
先頭のなんさんに続き、どうにか登り終えた所で、後ろから「うわあっ!らーくっ!」という叫び声。
続いて凄まじい落下音、遥か下で岩の砕ける音。
全身が凍りついた。
後ろで落石が起きたらしい。
最悪の事態が頭をよぎるが、すぐに二人の話し声が聞こえてきた。
幸いお二人とも無事な様子。ほっと胸をなで下ろす。
聞いたら、途中の大きな岩が剥がれたらしい。
しっかりした岩に見えたので、私は全体重を預けて攀じのぼってしまっていた。
もしその時に落ちたり、あるいは下にいたとしたらひとたまりもなかっただろう。
事故に遭わないという事は、幸運に支えられている部分も少なくない。
冷や汗をかいたが、無事に登り終えると、すぐに次の滝。
これは左側の岩壁を登る。
私もなんとか登って、なんさんOさんと3人で上で休んでいたら、だいぶ難儀したらしいSさんが「もっとお助け(紐)を多用してください!」と文句を言いながら登ってきた。
半分冗談のようでもあったが、「落ちてからじゃ遅いんだよ」とかなり本気でご立腹の様子だった。
私は自分の事で精いっぱいだが、グループ行動でリーダーを任される人は大変だなあ、と思った。
その後は難所もなく、ちょっと倒木が煩わしかったが順調に高度を稼ぐ。
空が明るくなり、右手に笹原が見えてきた。
もう稜線が近い。
左岸の踏み跡を辿り、一面の笹原を登って稜線に出る。
こういう詰めは爽快感があって最高である。
稜線上で小休止。
天気も良くて、尾根を渡る風が気持ちいい。
あとは尾根沿いに歩いて、
入渓点へ下るだけ、と思っていたが、そんなに甘くなかった。
広い尾根の下りで、背丈を超える笹藪に惑わされ、1本隣の尾根を下ってしまった。
結構踏まれている踏み跡が笹の中に続いていたので間違えてしまったのだ。
途中で違う方向に向かっているのに気がつき、100mの標高差を登り返す羽目に。。
ただの100mならともかく、激藪の中を登り返すのは本当にキツい。
ここで1時間以上ロスしてしまった。
どうにか登りきり、正しいルートに出る。
こちらは明確な道がついており、快適に下る。
が、やはり途中から笹薮に・・・
鹿道が交錯して迷いかけるが、ビニールテープの目印を頼りになんとか抜ける。
その後は開けた森の中、広い尾根を下る。
テープやリボンの目印が所々にあって、それに従って歩くのだが、それでも何度か見失って迷いかけたり、道が崩れていたりと簡単には行かせてもらえなかった。
どうにか以前歩いた道にたどり着き、入渓点に戻ったときには6時を回ってしまっていた。
もうみんなクタクタ。
これからまた1時間半の林道歩きが待っていると思うと気が遠くなる。
が、歩かなければ帰れない。
最後の気力を振り絞って歩き出す。
林道の途中で日が暮れ、真っ暗になるが、先を行くなんさんはヘッ電をつける気配がない。
聞くと、「ザックを降ろしたらもう2度と背負う気になれないから」だそうな。。(^^;
私も付き合って、暗い林道を目を凝らしながら歩いた。
意外と見えるものである。
人間の視力ってすごい。
最初は「この沢を越えたからあと何分くらいかな?」などと考えながら歩いていたが、徐々にそれすら面倒になってしまった。
半分放心状態で、思考が止まった状態で機械的に歩き続ける。
もう、いいかげん体力が尽きかけた頃、ようやく車に帰り着くことが出来た。
倒れこむようにザックを降ろす。
確かに、もう2度と背負う気にならない。
もう歩かなくていい、という開放感からか、一気に体中の力が抜けた。
とにかく疲れた・・・・
昼から何も口にしていないのに、疲れすぎて空腹すら感じない。
ハンドルを握る気力も無くなってしまい、帰りはOさんに運転を代わってもらう。
有料と高速を使って、どうにか皆さんの終電に間に合う時間に帰ってくることが出来た。
無事に帰り着く事が出来て本当に良かった。
家に帰ったのがこんなに嬉しく感じられたのは初めてだ。
それだけ今回の山行がハードだったと言う事なのだろう。
参加された皆さん、お疲れ様でした。
本当にありがとうございました。
*帰ってきた時は「もうしばらく沢はいいや」と思っていたが、こうして記事を書いていると、また次の山行に思いを馳せている自分に驚かされる。
つくづく人間というのは懲りない生き物である。(笑)
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