秋の恵み
久しぶりに秩父の渓へ。
この時期になると、もう毛鉤釣りではあまりいい釣りができないので、ここ数年はすっかり秋の渓流釣りはご無沙汰していた。
今回は釣果はともかく、とにかく渓を歩きたかったので、今年のシーズンの締めくくりとして出かけてみた。
本当はいつものホームリバーに、と思っていたのだけど、夏の間の不摂生で体重が増えてしまったのと、しばらく歩いていないので脚力も落ちていると思い、無理せずに安楽な渓に入ることにした。
朝4時に入渓点に到着すると、2人組の釣り人が準備をしている。
話を聞くと、私の入ろうとしていた川とは別の支流に入るそうだ。
まだ真っ暗だが、とりあえず準備をして川に降りる。
ヘッデンの明かりを頼りに踏み跡を下っていたら、足を滑らせて2mほど滑落してしまった。
大きなダメージはなかったが、左手の薬指を突き指してしまったようで、ちょっと痺れている。
どうにか川に降り立ち、明るくなるのを待っていると先ほどの2人組も降りてきた。
夜明けを待つ間、しばし立ち話で時間をつぶす。
秩父の渓の情報交換、○○沢は良かった、□□川はさっぱりなど等。。
最近、決まった川ばかりしか足が向かなくなった私には貴重な情報である。
5時半ごろになり、ようやく遡行が出来るくらいまで明るくなってきた。
お互いの好釣を祈りつつ、其々の目的の沢へ向かう。
予想通り、最初は全く反応が無い。
先行者はもちろん居ないのだが、砂地に真新しい足跡が残っていたので、昨日か一昨日あたりに誰かが入ったのだろう。
この時期は皆ラストスパートで釣りに行くのか、どこの沢も競争が激しい。
シラヒゲソウ。
6寸ほどのちびイワナ。
ボウズだけは逃れて一安心。
ここは落差の少ない瀬が続き、毛鉤で釣るにはいいポイントが続く。
再び沈黙を守る川を、毛鉤を振りつつ遡行する。
最初の沢を過ぎた辺りで、熊鈴の音が!?
間違いなく朝一番で歩き始めたはずなので、おそらく途中まで道を歩いてから入渓したのだろう。
こちらに気が付くと、バツが悪そうに竿をたたんで下ってきた。
「どこから入りました?」
責めるつもりは無かったのだが、無意識のうちに口調が厳しくなっていたらしい。
咎められていると思ったのか、「すみません、道を歩いて途中から入りました」と申し訳なさそうに言う。
「車には気が付いたのですが、沢に入っているかと思って・・・」
山道で先回りしたからと言って、頭をハネてはいけないという道理もないのだが、まだ若い釣り人はすっかり恐縮してしまって、どうぞ先に行ってくださいと、先行を譲ってくれた。
少しの間、立ち話をしてから、礼を言って先行させてもらう。
しばらくは竿を振らずに、出来るだけポイントを荒らさないよう気を付けながら遡行に専念する。
やはりこの時期はどこの沢も厳しいのだなあ。。

再び竿を出して遡行。
すぐにイワナが出た。
ちょっとサイズアップ。

底から浮かび上がってきて、大口を開けて毛鉤を咥え、反転するところまではっきりと見えた。
水面直下を自然に流す私のテンカラ釣りでは、まさに会心の1匹。
もうこれで十分満足である。心置きなく納竿できる。
倒木にキノコ発見。

ツキヨタケの幼菌だった、残念。
気温が上がって虫が飛び始めると、少しづつ毛鉤への反応も良くなってきた。
落ち込みの巻き返しで、毛鉤をひったくる様な反応。
イワナにしてはよく走るな?と思ったらヤマメだった。

8寸弱の精悍な顔つきのヤマメ。
この体色は、もう産卵期が近い事を感じさせる。
その先でもまた7寸ほどのヤマメが出た。
これは撮影前に逃走してしまった。
大岩を乗り越えた所で、倒木に再びキノコ発見。
ナラタケ。

美味しいキノコなので、これは嬉しい出会い。
秋の渓はこれが楽しみの一つでもある。
チャワンタケ。

食毒不明。
ダイモンジソウ。

禁漁間近の渓を彩る花。
これもいい出方をしてくれた。

6~7寸のイワナを数匹追加したところで、最後の沢の出合いの淵。

この淵は開けた場所にあるせいか、天気が良い日はエメラルドグリーンに輝いてとても綺麗なのだが、この日は生憎の曇り空で水色は今一つ。
その先はちょっと両岸が迫って、狭間が続く。

急流に足を取られないよう、倒木の下をへツリ・・

残置を頼りに右の大岩を這い登る。
楽しい~!(笑)
もう竿を出すのが面倒になってしまい、そのまま脱渓点まで沢歩き。
今日の終了点、ヤマメ止めの大渕に到着。

時間はちょうど昼前、ゆっくりと昼食を取って大休止。
日差しはほとんどないが、暑くもなく寒くもない快適な気候。
大きな倒木の上に仰向けになって、自然の中に身を置く喜びを全身で感じる。
やっぱり渓流はいいなあ。
ここから車までは約2時間の山歩き。
最初に尾根を急登するのだが、鈍った脚が増えた体重に悲鳴を上げる。
標高差にすれば250mほどの登りが、遥かな道のりに感じられた。
へろへろになりながらなんとか登り切り、あとは山道を下る。
倒木にブナハリタケが出ていた。

乾燥して固くなっていた、食用にはなりそうもない。
ヒラタケ!と思ったが・・・

違うキノコだった。。
傘の裏にひだが無い。

不明菌、これはなんだろう?
途中の林道で見つけた山ブドウ。

黒く熟した実を口に含んでみたが、恐ろしく酸っぱい。
これは果実酒にでもするしかない。(ブドウの果実酒は違法らしいが・・)
林道に落ちていたサルナシの実。

サルの落し物かな?
よく熟していたので、これも口に入れてみた。
甘くて美味しい。
一粒で幸せになれるような甘味だった。
キノコに野の花、木の実など。
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